新薬開発の四方山話(40):In vitroとin vivoの違いについて

日頃、肝要なことも考えず何気なく過ごしていると亡羊として些事に拘り、ただ時間だけが無為に過ぎて行ってしまいます。そんな日々を「のんべんだらり」と送っている私の名はTOBIRA小出徹です。

さて、今回は医薬品開発で必ず出会う標記話題に関して考えて見ましょう。それぞれin vitroとは「試験管内での」、in vivoとは「生体位での」を本来意味します。が、最近では、 細胞生物学(cell biology)や分子生物学(molecular biology)では、培養した細胞(cultured cells)を扱った場合をin vivo、そして細胞内器官(cell organella)や物質を扱った場合をin vitroと言っているようですが、如何なものかと。

ここでは、私は本来的なin vitroと in vivoの定義を念頭におき話を進めたいと思います。つまり、in vivoとは「まるごと生きた状態の生命体」の意味です。されさておき、表題の回答を考えて下さい。

私でしたら「in vitroでは血流(blood flow)が全くなく、一方in vivoでは血流がふんだんにある」と答えますね。ですので、in vitroの実験系から得られた成績は概して純粋な事実を反映していると考えられますが、血流がない動物は生きてはいられませんので、in vivoの状況とは全く異なっていると見做すのが科学的には妥当でしょう。ところで、哺乳類(mammalian)の血液は「赤色」ですが、カニなどの甲殻類(crustacean)の血液は何色かご存知ですか?答えは「青色」です。これについては後程触れます。

本題に入ります。血流を確保している臓器(organs)が血管(blood vessels)です。そこで、以下に血管について話を進めたいと思います。あくびなんかしないで、しっかり目を開けて起きてて下さい。

先ずは下図を見て下さい。これは血管系の解剖図です。私たちの体内にある血管が示されています。

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血管は解剖学的(anatomical)には、 大動脈(arteries)、弾性動脈(elastic arteries)、分布動脈(あるいは筋肉内動脈)(distributing arteries or muscular arteries)、小動脈(arterioles)、毛細血管(capillaries)、細静脈(venules)と静脈(veins)と分類されます。なお、動脈血は75~100mmHg、 静脈血は30~40mmHgの酸素分圧(oxygen tension)です。この酸素を運び手は、哺乳類の場合はヘモグロビン(hemoglobin)で甲殻類はヘモシアニン(hemocyanin)なのでそれぞれ「赤色」と「青色」に見えます。

話題を変えます。昨今、臓器移植(transplantation)が盛んに行われていますが、この問題は拒否反応(rejection)と移植された臓器が定着(engraftment)しないことです。前者の予防には免疫抑制剤(immuno suppressants)が投与されます。最近の英国の研究によりますと、患者の血小板から分離した内皮前駆細胞と臓器とを一緒に移植すると、生体にある血管系と移植される臓器の血管系とのネットワークが活発になり、生着率が格段に上がるとのことです。やはり、血管系はin vivoでは大変重要ですね。