新薬開発の四方山話(61):春眠暁を覚えず

真夏に「春眠暁を覚えず」なんて「お頭が狂っているの?」なんて言われそうですね。「そうなのです。私は四季の区別ができないほどの間抜けな人間」なのです。お元気ですか?TOBIRAの小出徹です。

さて「睡眠」(sleep)は人生の1/3を占めてはいますが、その「医学的な意義」(medical significance)については、 まだまだ「未知な部分があり」(much remains to be elucidated)です。という訳で、今回は「睡眠」を題材とし、最近「睡眠」について得られた新しい情報をご紹介します。では、始めますよ~。

「睡眠」について幾つか質問があります:「睡眠」の反対語は?「睡眠」を客観的に捉えるにはどうする?「睡眠の深さ」ってな~に?「睡眠」って分類されるの?「睡眠」に関連する疾患は?さてさて。

それでは一つずつお答えします。「睡眠」の反対語は「覚醒」(awake, arousal)です。つまり、目が覚めている状態。「睡眠を客観的に捉える?」。答えは「脳波計」(electroencephalograph, EEG)です。なんと1929年に創出されました。臨床的には「脳波計」は「痙攣」(convulsions, seizures)や「脳腫瘍」(brain tumors)の診断に使われます。つぎに「睡眠の深さ」は、実は4~5段階に分類されます(下図参照)。「睡眠の分類」につきましては「REM, rapid-eye-movement」(レム睡眠)と「NREM, non-rapid-eye-movement」(ノンレム睡眠)。「睡眠」に関する疾患には「入眠障害」(sleep-disturbances)と「睡眠発作」(narcolepsy)(昼でも急に眠りこけてしまう疾患)などがあります。如何でしたか?

コラム小出(61)-表「脳波計」は脳の電気活動を捉えますが、得られる「波形」(waveforms)により「δ波」(1-3Hz)、「Θ波」(4-7Hz)、「α波」(8-13Hz)、「β波」(14Hz)に分類されます。これを「脳波」と称します。

コラム小出(61)-図1得られた「脳波」を用い「睡眠の深さ」を求め、「睡眠図」(hypnogram)を作成しますと、各段階で特徴的な「波形」が出現することがお分かりかと思います(左表)。ヒトの「睡眠」はこのように分析されています。以下に「疾患」との関連について触れます。

左図のように通常は「NREM」から「REM」へと移行しますが「睡眠発作患者」の場合は、入眠直後に「REM」移行するため幻覚、幻聴、金縛りを経験し、「睡眠」が浅くなる傾向にあります。治療にはメチル フェニデートやモダフィニールなどの刺激剤を用います。また、睡眠導入剤や抗鬱剤は、睡眠中の「REM」と「NREM」の割合を変化させ、予期せぬ副作用を発現しますので注意が必要です。前にも述べましたが、ヒトの「睡眠」は「AWAKE」→「NREM1」(5%)→「NREM2」(45%)→「NREM3」(25%)と段階的に「眠り」が深くなり、続いて「REM」に移行します。このサイクルを5~6回繰り返し、「REM」(25%)の時には「夢」を見ています。最後に「睡眠の分子生物学的な研究」について触れます。「眠気」(sleepiness)や「夢を見ない」(dreamless)(つまりREMがない)マウスを人為的に作製し、これを用いて「REM」と「NREM」に関する世界的研究が筑波大学で進行中です。