質問①:「五感」(five senses)って何ですか?回答①:「視覚」(sight/vision)、「聴覚」(hearing/auditory)、「触覚」(touch/somatosensation)、「味覚」(taste/gustation)そして「嗅覚」(smell/olfaction)です。それぞれ「日常語/医学用語」の順に表現しています。ちなみに、日本語の「衣食住」は、英語では単語の順番が異なり「食衣住」(food,closing and shelter)となります。この順番を見ても合理的な英語圏と雅やかな倭国との文化性の差異を感じますね~。翻って「五感」の順序はどうか?
質問②:これらは「伝統的な五感」(traditional five senses)と称され「非伝統的な五感」(non-traditional five senses)とは一線を画しています。ご存知でしたか?では、非伝統的な5つとは?回答②:「バランス」(balance)&「加速」(acceleration)、「温度」(temperature)、「自己受容」(proprioception)と「痛み」(pain)です。この中で、今回はとくに「痛み」を題材にしたいと思います。
質問③:「痛み」の生理的な機能?回答③:「痛み」に機能がある?悪ふざけは止めて!「痛みを好きなヒトなんて皆無だ」と言われることを覚悟して回答します。(1)「痛み」は「危険」に伴って生じることが多いため「危険を回避する」(protect against dangers)という機能があり、 (2) 「痛み」を感じないと「危険を認知・察知できない」という点もあります。質問④:「痛みの受容体」は大別して幾つ?回答④:(1) 「皮下」(cutaneous receptor)、(2) 「体性; 関節&骨」(somatic receptor; joints and bones)そして (3) 「内臓」(visceral receptor)の3つが知られています。では質問⑤:どのような体内に存在する物質が「痛み」を起こすのでしょうか?これらを総称して「内因性発痛物質」(endogenous algesic substance、 eAS)と言います。回答⑤:左図をご覧ください。これは「神経シナプス」(neural synapses, NS)と「ミクログリア」(microglial cells, MG)の模型図です。MGからは沢山のeAS(黄色の箱の中の物質)が放出されて、NSに作用して「痛み」発現することが伺われます。つぎに質問⑥:「痛みを取る薬(鎮痛剤)」(pain killers/analgesics)の種類を幾つ言えますか?一つでも言えたら「あなたは凄い方」だと思います。本当。回答⑥:(1) 非麻薬性鎮痛剤(non-narcotic analgesics)、(2) NSAIDs(non-steroidal anti-inflammatory drugs)、(3) サイクロオキゲナーゼー2阻害剤(COX-2 inhibitors)、(4) 麻薬性鎮痛剤(narcotic pain medications)、(5) 中枢性鎮痛剤(central analgesics)、(6) 併用療法(combinations)、 (7) 局所性鎮痛剤(topical analgesics)そして (8) 局所性麻酔剤(topical anesthetics)の八つです。
最後に:最近の話題から(米国Purdue University,2017発表,DOI:10.1126/science.aa10833)。麻薬性鎮痛剤の効果は抜群ですが、長期連用すると効き目が減弱し「依存症」(dependency)が生じます。この原因は「アデニールシクラーゼ」(adenylate cyclase,AC)酵素活性を脱抑制することにあると考えさらに「AC-1選択的阻害剤(ST032307)(生体内には10種類のACがある)は、記憶形成にも影響せずに鎮痛効果を発現した」そうです。選択性を高めるという問題はありますが、今後の研究に期待ですね。