新薬開発の四方山話(33):「寝る子は育つ」の新しい解釈 

「寝る子は育つ」(“Sleep brings up a child well”)と言われて久しい。私の場合なんかは、この諺(proverb、 saying)を単純に信じて「寝てばっかり」で育ったばかりに、いまの私になってしまいました。これこそ「後悔先に立たず」(”It is no use crying over spilt milk”)ですね。TOBIRAの小出徹です。

今回は、この「寝る子は育つ」とう諺の意味に脳科学的にメスを入れようと思っています。最近なされた研究成果をもたくさん盛り込もうと思います。ではお楽しみ下さい。では、ご案内を開始します。

ヒトは誰も寝ます。人生のおよそ1/3を寝て過ごします。「私は1日2~3時間寝れば充分だ」なんてヒトもいらっしゃるでしょうが、そのようなヒトは例外的な方ですね。では、一体なんの目的で睡眠を摂るのでしょうか?体全身を休めることも勿論大切ですが、その他の生理学的機能はあるのでしょうか。

この質問に対する回答は、答える方の専門性によって偏りがあるようです。そこで、以下では最近の話題から昔へと時の流れに「逆行して」(go/move backward、 retrogress)科学的に回答します。ところで「睡眠に入りこむことが困難な方」(sleep disturbances)や「不眠症」(insomnia)の方には睡眠導入剤(sleep inducers)が処方されます。大半がマイナートランキライザーに属する薬剤です。最近では「不眠症」の治療には「オレキシン受容体拮抗剤」(orexin receptor antagonists)が使用されています。

コラム小出(33)図さて、2013年末米国Rochester医療大学M. Nedergaard教授(典型的デンマーク人の姓。デンマーク人哲学者キェルケゴールはKierkegaardです)は「Glymphatic System」(訳語はない)なる概念をScienceに発表、 話題をさらいました。曰く「睡眠は脳内老廃物を脳外に除去・排泄する機能があり、この機構を理解すればアルツハイマー病とかパーキンソン病の治療にも応用できる」としました。つまり、寝ている間に、神経毒作用を有するアミロイドベータタンパク質やリン酸化されたタウタンパク質を脳脊髄液が脳実質細胞間質液から洗い流され治療になるという訳です。ちなみに、上図が「起きている時」、下の図が「寝ている時」に、脳微小血管系から流出した老廃物」で、マウスが自然のままの状態(in situ)で撮影した写真です。「寝ている」時のほうが、老廃物の排泄量が俄然多いことが、お分かり頂けると存じます。

一昔は「睡眠の間に不必要な情報を消去し、必要な情報を脳内に記憶として固定する(consolidate)」という「睡眠の解釈」もありました。また、例えば自閉症の子供は、「不必要な情報を消去できないがゆえに精神的な葛藤が生じる」などの考えもありました。何も私はこの考え方が間違いだとは言ってはいません。正論だと思います。「Glymphatic System」も記憶の形成など「認知機能」(cognitive functions)に係わっていると考えるからです。いずれにしても脳科学は「日進月歩」(rapid advance)ですね。じゃ~。